心臓腫瘍
心臓腫瘍
他の臓器と同じように心臓にも腫瘍ができることがあります。頻度としては全体の0.1%と非常に稀な病気で、そのうち良性のものが約70%、悪性のものが約30%という割合です。
心臓腫瘍には原発性(良性、悪性)の場合と転移性(悪性)の場合があります。
原発性心臓腫瘍で最も多いのは良性の粘液腫で良性腫瘍の約50%を占めます。
粘液状あるいはゼリー状のやわらかい腫瘍が心臓の中にできて次第に大きくなる病気です。女性の発生率が男性の2~4倍であり、心臓のどこにでも発生しますが約75%が左心房に発生します。
癌とは違い良性ではあるものの、心臓の中で大きくなるため心臓の機能を低下させたり、腫瘍の一部が飛んで脳梗塞などを引き起こすこともあり手術で切除する必要があります。
粘液腫以外の良性腫瘍には脂肪腫、乳頭状弾性繊維腫、線維腫、血管腫、奇形腫などがあります。これらも腫瘍の発生場所によっては心機能を低下させたり塞栓症のリスクがあるため手術で切除する必要があります。
心臓腫瘍のうち、悪性のものには原発性のものと転移性のものがあります。原発性の悪性腫瘍は肉腫、悪性中皮腫、悪性リンパ腫がほとんどです。
肉腫が最も多く、中年成人(平均44歳)に生じます。右心房に発生することが大半で肺や縦隔に高確率で転移します。
悪性中皮腫はまれで若年成人に発症することが多いです。
悪性リンパ腫は極めてまれで通常はHIV・AIDSなどの免疫不全患者に生じます。腫瘍切除や放射線療法、抗癌剤などいずれも効果はあまりなく、予後不良といわれています。
症状
心臓腫瘍の種類や位置、大きさによって症状がみられないこともあります。しかし、大きくなった腫瘍が心臓の中を占拠して血流障害を起こすことがあります。粘液腫は左心房に発生することが多く、腫瘍が血流を傷害するようになると息切れや眩暈といった僧帽弁狭窄症と似た症状が出現します。
腫瘍がさらに大きくなり僧帽弁にはまってしまうことで血流が遮断され突然死してしまうこともあります。
また、腫瘍の一部がはずれて飛び、体内の血管に詰まることで塞栓症を引き起こすこともあります。
脳の血管に詰まると、
といった脳梗塞の症状が出現します。
足の血管に詰まると、
といった下肢動脈塞栓の症状が出現します。
診断
症状や兆候が他の頻度の高い疾患のものにも出現するため発見が遅れることもありますが、心臓超音波検査(心エコー)や心臓CT検査で心臓腫瘍の有無がわかります。画像検査で良性腫瘍と悪性腫瘍を鑑別できることが多いですが切除して初めて診断がつく場合もあります。
治療
良性腫瘍に対しては切除することが原則です。心臓腫瘍を小さくする薬は現在存在しないため、手術のできる連携している病院へ紹介させていただきます。粘液腫の場合、切除した後5~10%で再発することがあるため定期的に心臓超音波検査(心エコー)で経過観察することが大切です。
悪性腫瘍のほとんどは予後不詳のためほとんどの転移性腫瘍に対しては緩和療法を行います。