大動脈弁狭窄症
大動脈弁狭窄症
心臓は血液を全身に送るポンプの役割をしています。肺で酸素を取り込んだ血液は大動脈弁を通って心臓から勢いよく全身に送り出されます。大動脈弁は送り出した血液が心臓に逆流しないように3枚の弁が組み合わさって大きく開いてしっかり閉じる仕組みになっています。
この弁が加齢などで石灰化して硬くなり弁が開きにくくなる(狭窄する)ことで血液の流れが妨げられてしまいます。これを大動脈弁狭窄症といいます。
原因
大動脈弁狭窄症はさまざまな原因がありますが、近年では加齢や動脈硬化が原因であることが増えています。
他にも先天性やリウマチ性などがあります。
症状
大動脈弁狭窄症は、初期段階では無症状であることが多く徐々に進行していくため他のご病気の検査で見つかる事がほとんどです。多くは50代や60代になって症状が現れます。
進行すると突然意識を失う“失神”や、運動したときに出現する“胸痛”や“息苦しさ”といった症状が出現します。
まれに合併症として感染性心内膜炎が生じることもあります。これは、心臓の弁や心膜に生じた僅かな傷から細菌感染を引き起こす病気で、弁を破壊するだけでなく脳梗塞や脳動脈瘤などの様々な合併症を引き起こす可能性があるといわれています。
以前は一般的に生命予後は胸痛が出現すると5年、失神が現れると3年、心不全症状が出現すると2年といわれていました。
しかし、ご高齢の患者様は症状が乏しい方が多く最近ではエコー検査で診断された方は症状の有無に関わらず1年以内の死亡率は50%と越えるといわれています。
また、大動脈弁狭窄症は普段元気に過ごされている方が突然死する可能性がある疾患です。
診断
聴診が発見の一つのきっかけとなることも多いです。心臓の雑音がある場合には大動脈弁狭窄症は疑う病気の一つとなります。ただ、すべての大動脈弁狭窄症で雑音が聞こえるわけではありません。
正確な診断には心臓超音波検査(心臓エコー)を行います。
心臓エコーでは弁の数や大きさ、硬さなどを測定し病状の進行具合や大動脈弁狭窄症の重症度を評価することができます。また、同時に心臓の動き(左心室の機能)を評価することもできます。
心不全の合併を評価する上でも心臓エコーが重要ですが、同時に血液検査も行って評価を行います。
また、大動脈弁狭窄症に狭心症などを合併することもあり、必要に応じて冠動脈CT検査で評価をおこなう場合もあります。
治療
大動脈弁狭窄症の重症度や合併されているご病気によって治療法は異なります。高血圧などの基礎疾患は内服等で平行して治療する必要があります。
▶︎大動脈弁狭窄症が軽度~中等度の患者様
定期的な心臓エコー検査で経過観察する必要があります。症状に出にくいご病気ですので検査での評価が重要です。
心不全や不整脈等がある場合には、内服薬での治療を行う場合もあります。また、心不全を合併している場合にはこの間に体力の低下を来してしまう患者様もいらっしゃいますので病院で運動療法(心臓リハビリテーション)を行って体力の維持を行うことも重要です。
▶︎重症の患者様
外科手術を検討する必要があります。大動脈弁を人工弁に置換する手術です。
近年ではご高齢の患者様が増えてきており、より低侵襲なカテーテルを用いた弁置換術(TAVIもしくはTAVRといいます)が適応になる場合もあります。
手術が必要な場合は連携している病院へ紹介させていただきます。
ただ、手術したからといって完全に症状や心臓の状態が改善するわけではありません。
整形外科で骨折したときに手術をする場合にもリハビリテーションを行うように、心臓の手術後にもリハビリテーションを行い心臓の療養を行う必要があります。
リハビリテーションを行いながら創部の管理や生活や療養の指導を行います。
最後に
当院では充実した設備とスタッフで心臓リハビリテーションを行っておりますのでお気軽にご相談ください。