尿路感染症
尿路感染症
尿は腎臓で作られて、尿管を通って膀胱に運ばれて膀胱で貯められた後に尿道を通って排出されます。
この尿の通り道に細菌が感染し、炎症が起こるものを「尿路感染症」といいます。尿路感染症の多くは、尿道口から侵入した細菌が尿路をさかのぼって感染に至ります。とくに女性は尿道が短いため、細菌が尿道をさかのぼり易く、尿路感染症にかかりやすいといわれています。
原因・症状
原因となる主な細菌としての大部分は大腸菌であり、その他としてはクレブシエラ、プロテウス族、エンテロバクター、セラチア、緑膿菌、腸球菌などがあります。①若い女性、②妊婦以外、③尿路に解剖学的異常(腫瘍や前立腺肥大症など)がないものを単純性尿路感染と呼び、単純性尿路感染は9割程度が大腸菌によっておこるとされています。それ以外は複雑性尿路感染と呼び、その場合には大腸菌以外の可能性もより想定する必要があります。
症状は膀胱~尿道の感染(膀胱炎、尿道炎)では
・排尿時の痛みや尿の回数が多くなる、
・夜間にトイレに行きたくなる
などがあります。
感染が腎臓まで及ぶと(腎盂腎炎:じんうじんえん)、
・熱が出る(発熱)
・寒気がする(悪寒)
・お腹の横から背中にかけて痛む(側腹部痛・背部痛)
などの症状が出現します。
検査・治療
上記と似たような症状を呈する疾患も多く、正確な診断は簡単ではありません。尿の中の白血球の検査や尿の培養検査、血液検査などを行って総合的に判断します。
また、場合によってCT検査を行って他の疾患の可能性を除外する必要があり、当院では必要に応じて当日にCT検査を対応することができますのでより正確な診断ができると考えています。
治療は細菌に対して抗生剤を使用します。腎盂腎炎では治療が奏功していても解熱するまで3日程度かかるとされていますが、3日を超えても発熱が続く場合にはCT検査などで腎臓周囲に膿瘍を形成していないか確認する必要があります。
治療期間は部位によって異なっており、膀胱炎では3日程度、腎盂腎炎では14日程度とされます。適切な治療が行われていても再発が多いのも尿路感染症の特徴の一つです。前立腺肥大症や糖尿病のある患者様では特に注意が必要です。当院では原則として治療2週間後に尿の培養検査を行って、細菌が残っていないかを確認して治療がきちんとできているかを評価します。
再発する尿路感染症では長めに抗生剤を使用することもあり、また背景になにか尿路の病気が隠れている(腫瘍や前立腺肥大症など)こともありますので場合によっては専門の医療機関にご紹介をさせていただく場合もあります。
最後に
尿路感染症は敗血症という極めて重篤な感染症の原因のナンバーワンとされています。早期に治療を開始し、しっかりと最後まで治療を行うことが重要だと考えています。
予防に関しては特に女性ですが、性交渉のあとには排尿をして細菌を体の外に排出する習慣をつけていただくのが一つです。 また、排便後にトイレットペーパーで肛門を拭くときは、後ろから前に拭くと大腸菌が尿道口に付着してしまうので、「前から後ろ」に一方通行で拭くことを徹底することも重要な予防方法の一つです。