心筋症
心筋症
心臓は全身に血液を送るポンプの役割をしています。心筋症とはこの心臓の壁である筋肉の構造と機能が障害される進行性の病気です。
心筋の病気のうち
原因や疾患との関連がはっきりしているものを「特定心筋疾患」
そうでないものを「特発性心筋症」
といい、心筋症とはこの原因不明の場合(特発性心筋症)を指します。
◎心筋のご病気の種類
特発性心筋症 |
拡張型心筋症 |
肥大型心筋症 |
|
拘束型心筋症 |
|
不整脈源性右室心筋症 |
|
分類不能型心筋症 |
|
特定心筋疾患 |
虚血性心筋疾患 |
弁膜性心筋疾患 |
|
高血圧性心筋疾患 |
|
炎症性心筋疾患(心筋炎など) |
|
代謝性心筋疾患(ファブリー病など) |
|
全身性心筋疾患(サルコイドーシスなど) |
|
神経・筋疾患 |
|
過敏性・中毒性疾患 |
|
アルコール性心筋症 |
|
産褥性心筋疾患 |
心筋症は大きく分けて拡張型心筋症(DCM)・肥大型心筋症(HCM)・拘束型心筋症(RCM)の3つのタイプがあります。
▶︎拡張型心筋症(DCM)
心筋の収縮力が低下することで左心室が拡大する病気です。進行すると左室の機能低下から心不全を引き起こします。
明らかな原因は不明ですが最近では心筋へのウイルス感染や免疫異常が関係している可能性があるといわれています。
ゆっくりと進行する病気であり心移植適応例の約80%は拡張型心筋症です。また、5年生存率は76%であり死因の多くは心不全もしくは致死性不整脈といわれています。
▶︎肥大型心筋症(HCM)
心肥大をおこす原因となる高血圧や弁膜症の病気でないにもかかわらず、心筋が変性して肥大(壁が厚くなる)する病気です。心筋が肥大すると心室が十分に拡張できず、体に十分な血液を送ることが出来なくなります。初期には症状が出現しにくく気づきにくい病気であり、若年のアスリートの突然死の一番の死因ともいわれています。肥大型心筋症は左室から血液が流れる経路(左室流出路)が狭くなる場合と狭くならない場合で「閉塞性肥大型心筋症」と「非閉塞性肥大型心筋症」に分かれます。
心筋の収縮に関係しているたんぱく質の遺伝子変異が主な原因とされており家族性の約半数がこれらの遺伝子変異が認められています。しかしながら後の半数は原因が不明です。一般的に病気の進行は良好であり全く無症状のまま人生を終えられる方も少なくありません。しかし、症状の有無にかかわらず致死的不整脈や心不全の進行、拡張型心筋症へと変化することもあるため定期的に専門の医師のもとで経過観察をすることが大切です。
▶︎拘束型心筋症(RCM)
他の心筋症と比較して非常に少ない疾患であり、アフリカ、インド、中南米、一部のアジアの国々で患者様が多く存在します。心拡大・心肥大を伴わず見た目の心臓の動きは正常であるが、心室に線維化あるいは浸潤した心筋をみとめ、心臓が固くなり心室が十分に拡張できなくなる病気です。
発症しやすい人や原因などは正確にはわかっていないのが現状です。初期症状は認めず病気の進行とともに動悸や息切れ、むくみといった心不全症状を認めます。現在有効な治療方法は確立されておらず、対症療法が中心となります。
症状
無症状であることが少なくありませんが、病気が進行し心機能が低下すると
といった心不全症状を認めます。
肥大型心筋症は動悸、胸部圧迫感に加えて、閉塞性肥大型心筋症の場合はめまいや失神を認めることもあります。
検査
きっかけとなるのは身体所見や心電図、レントゲンといった画像検査ですが、心臓超音波(心エコー)が診断の決め手となるます。
心エコーにより心筋の厚さや内径、収縮力といった心臓の機能を知る事ができます。より正確な診断をするためには心臓カテーテル検査や心臓の組織を調べる心筋生検が有効とされており、当院では実施できないため連携している病院を紹介させていただきます。
また、心筋症の合併症で心室性の不整脈が認められることもあるためホルター心電図による不整脈の検査も重要です。
心機能が徐々に低下していくと、軽い運動でも息切れなどを認めることがあります。あおのため運動耐用能を調べるために心肺負荷試験を行うこともあります。
治療
▶︎特発性心筋症
特発性心筋症に対して特別な治療法はなく、一般的には心不全治療としての薬物療法を行います。
拡張型心筋症は心不全に対する薬物療法や、重症化すれば心臓再同期療法(CRT、CRT-D)を行うこともあります。また、これらの治療でも改善しない場合には補助人工心臓や心臓移植といった外科的治療を考慮します。
無症状の肥大型心筋症は無治療で経過をみることもありますが一般的には薬物療法を行います。また、病態によっては心室中隔切除術といった外科的治療が適応となる場合があります。
拘束性心筋症は有効な治療法は確立されておらず対症療法を行います。無効な場合には心臓移植なども考慮します。
▶︎特定心筋疾患
虚血性心筋症では冠動脈バイパス手術やカテーテル治療(PCI)で心機能障害が改善することもあります。
アルコール性心筋症は早期であれば断酒のみで改善することもあります。
サルコイドーシスはステロイド剤が有効とされています。
最後に
心筋症により心臓の機能が低下することで心不全の症状が出る場合、薬物治療だけでなく運動療法も併用することがより効果的であるといわれています。心臓の状態を観察しながら患者様ひとりひとりに合わせた運動療法(心臓リハビリテーション)を行います。
当院では専門のスタッフが対応させていただきますのでお気軽にご相談ください。