急性扁桃炎
急性扁桃炎
扁桃は口蓋垂<こうがいすい>(いわゆる“のどちんこ”)の両脇、左右の舌の付け根あたりにあり、鼻や口から体内に細菌が侵入することを防ぐ役割を果たすリンパ組織です。6~7歳で大きさが最大になりますが、その後は徐々に小さくなり、大人ではほとんど分からなくなります。
扁桃炎とは、ここでウイルスや細菌が原因となって扁桃に炎症を起こし、さまざまな症状を引き起こす病気です。
原因・症状
主な症状としては38度以上の発熱、のどの痛み(咽頭痛)、寒気、倦怠感、頭の痛み、関節の痛み、あごの下や首のリンパ節の腫れなどで痛みが耳や頭の横に広がることもあります。
扁桃炎はかぜから起こることもあり、また、扁桃炎によってかぜの症状につながることもあります。扁桃炎になると扁桃が赤く腫れ、白い膿を持つこともあります。両方に炎症を起こすこともあれば片側だけのこともあります。
原因となる病原体には、溶連菌・ブドウ球菌・インフルエンザ菌・肺炎球菌などの細菌や、アデノウイルス・EBウイルス・単純ヘルペスウイルスなど様々なものがあります。原因菌の中でも特に注意したいのが、溶連菌と呼ばれる「A群β溶血性レンサ球菌」です。注意が必要な理由は日常遭遇することが多い最も病原性の高い細菌の一つであり、場合によっては敗血症や心内膜炎などの重症な感染に移行する可能性があるほか、リウマチ熱や糸球体腎炎などの後遺症を来しうるからです。
感染は幼児を中心に30歳代までに多く、季節的には冬に多く、9月頃から増加すると言われています。感染の多くは唾液や鼻水などの飛沫を介して広がります。
A群β溶血性レンサ球菌による扁桃炎は高熱が出やすい、のどの痛みが強くのみ込みにくい、腹痛を合併することがある一方咳や鼻水や声のかすれは出にくいとされています。
急性扁桃炎が進行すると、口蓋扁桃の周囲に炎症が及び、扁桃周囲炎を生じることがあります。そこに膿がたまり、膿瘍を形成することで、扁桃周囲膿瘍となります。
通常は左右どちらか一方がなり、症状としては食事ができない、あるいは水も飲めないほどの痛みがあり、 高熱などの症状が現れます。さらに、膿瘍が進展すると頚部(首)が腫れてきて、口も開けにくくなります。
このような扁桃炎を何度も繰り返すと、慢性化し習慣性扁桃炎となります。
検査・治療
検査としては迅速検査と培養検査を状況に応じて行います。速やかに結果が分かるのは迅速検査ですが、A群β溶血性レンサ球菌による扁桃炎の患者様でも陰性が出てしまう場合があり、陰性の場合には培養検査で菌の存在を否定することが必要です(検査に数日かかります)。
治療に関してはウイルス性のものは自然軽快しますのでその間、トローチやうがい薬などを使用します。症状が強い場合には炎鎮痛剤、解熱剤などを服用する必要があります。
A群β溶血性レンサ球菌など細菌性の場合には抗生剤での治療を行います。A群β溶血性レンサ球菌は抗生剤を使用しなくても病気の進行がなければ基本的には治癒する病気ですが、抗生剤を使用したほうが病気の治るまでの期間を短くし、後遺症の一つであるリウマチ熱の予防につながり、病気の進行の予防につながるとされています。また早期に治療を行うことで周りの人に感染するリスクを下げることにもつながります。
A群β溶血性レンサ球菌による扁桃炎については、きちんと治療を行っても15%の患者様で菌が残って再発の原因になるとされています。また後遺症として治ってから2~3週間後に心臓弁膜症の原因となりうる「リウマチ熱」や血尿・むくみが現れる「急性糸球体腎炎」などの合併症を引き起こす可能性がありますので治療後にも注意が必要です。
扁桃炎の予防としてはワクチンは現時点ではありません。日頃からよくうがいをして、不摂生をしないことや室内を十分に加湿してのどの乾燥を防ぐことが大切です。
痛みがある場合は、入浴、飲酒、喫煙は避けましょう。また、溶連菌に感染した方が家族にいる場合、兄弟・姉妹、親子でうつしてしまうケースが多いので、感染力が特に強いとされる抗菌薬の服用後約24時間以内までは念のため可能な範囲で隔離し、タオルの共用なども避けたりした方がよいでしょう。
もし感染した場合には、さらに周囲に感染を広げないようにする配慮も大切です。