肺炎
肺炎
肺は空気中の酸素をからだに取り入れ、いらなくなった二酸化炭素を外に出すはたらきをしている体の中で最も重要な臓器の一つです。
肺炎とは、細菌やウイルスの感染により肺におきる急性の炎症のことです。間質性肺炎、薬剤性肺炎などもありますが、これらは感染症ではなく、別の疾患として扱われることが多いです。
肺炎は世界的に最も一般的な死因の一つであり、日本でも主要な死因の一つです。
空気には微生物が含まれていますので気道や肺は常に微生物にさらされています。通常、吸い込まれた微生物に対しては咳や肺が持つ免疫機能によって防御しています。防御がうまく作用しない場合や攻撃性の強いウイルスや細菌を吸入した場合に肺炎に至る可能性があるとされています。
かぜによる気道の炎症が肺炎の引き金になることも少なくありません。インフルエンザウイルスも肺炎を合併しやすい原因の一つです。
また、食べ物や水分が誤って気管に入ってしまう誤嚥によっても肺炎を起こすことがあります。原因となる微生物としてもっとも多いのは肺炎球菌ですが、その他としてはマイコプラズマやインフルエンザ菌などがあります。
また、施設に入所中の患者様に関しては黄色ブドウ球菌や緑膿菌が多くなります。温浴施設に行ったあと2-10日程度で肺炎症状が起こっている場合にはレジオネラ菌が原因となっていることもあります。
症状
肺炎の症状には、発熱、咳、痰、息苦しさ(呼吸困難)、胸の痛み(胸痛)などがあります。ただし、高齢者の場合は、典型的な肺炎の症状があまりなく食欲の低下や意欲の低下などが主な症状のことがあり、肺炎を疑いにくいことがあるので注意が必要です。
検査・治療
検査に関しては血液検査、レントゲンやCTなどの画像検査が有用であり、いずれも当院で行うことが可能です。
検査の結果、重症の肺炎と診断された場合には命に関わるリスクがあり、入院が必要な場合があります。
原因となる微生物の特定のためには鼻腔の粘液による迅速検査や培養検査、尿の迅速検査などを行います。
治療は原因の微生物によって異なりますがいずれの場合にも脱水や電解質の異常がある場合には点滴などで補正することが重要です。
ウイルス性のものであれば自然軽快する場合もありますが、細菌が原因の場合にはそれに対する抗生剤を速やかに開始する必要があります。
痰の培養検査や血液の培養検査を行うことで、治療中によりよい治療に移行することができ、当院では積極的に培養検査を行っています。
抗生剤の投与期間も原因となっている細菌によって異なりますが、通常1週間~2週間継続する必要があります。呼吸状態が悪化している場合には酸素の吸入も必要です。高齢者や持病により抵抗力が落ちている患者様では治療に反応せず重症化していくこともあります。
丁寧に経過を観察しながら重症化の兆候がある場合には入院可能な医療機関に紹介させていただく場合もあります。
予防に関して最も重要なのは禁煙です。その他、原因として最も多い肺炎球菌に対してはワクチンがあります。日本では65歳以上になると定期接種の対象となっており、持病のある患者様では60-65歳でも対象となる場合があります。誤嚥が原因となっている患者様には口腔内のケアや飲み込みのリハビリが有用です。