頭部外傷
頭部外傷
頭の外傷による重要なご病気としては急性硬膜下血種、急性硬膜外血種、慢性硬膜下血種があります。いずれのご病気も外傷により頭蓋骨の中で血液が貯留して脳が圧迫されることで重篤な症状が出現します。それぞれのご病気についてご紹介します。
頭蓋骨のすぐ下には硬膜があり、その下にくも膜があり、その下に脳があります。この硬膜とくも膜の間で出血が起こるのが硬膜下血種です。外傷によって血管が傷つくことで起こります。起こってすぐに出血しているものを急性硬膜下血種と言います。急性硬膜下血種は強い外傷によって引き起こされることが多く、脳の損傷を伴っていることも多いのでその場合には受傷直後から意識障害が出現します。一方で脳の損傷がない場合には症状がでにくいこともあり、徐々に出血の悪化に伴い意識障害が出てくる場合もあります。
治療は手術になりますが、意識障害が出現している場合には手術を行っても死亡率は65%と高く、厳しいご病気です。
高所、階段からの転倒や、交通外傷などによって、強く頭部を打撲することで、頭蓋骨のすぐ下にある硬膜という膜と頭蓋骨との隙間に血液が貯留した状態を指します。
多くの場合は頭蓋骨の骨折を伴う外傷で、脳表面の血管が損傷することで起こります。社会的活動性の高い10-20代や転倒の多くなる高齢者によく見られますが、幼児(2歳以上)などにも見られます。出血量が少ない場合には自覚症状はありませんが、一定以上の血液量が貯留し、貯留した血液が正常な脳組織を圧排してくることで、頭蓋内圧亢進症状といわれる頭痛、嘔気や半身の脱力、意識障害などが出現し、悪化すると命にかかわる状態となる可能性があります。頭蓋内に出血が十分に貯留するまでの間は症状が出現しにくく、意識清明期と呼ばれたりします。受傷後数時間後、時には1日以上たって症状が出現する場合もありますので注意が必要です。
出血の部位と出血の速度に伴って重症度が上がり、最重症のものは一刻を争う状態で、緊急手術の適応にもなります。軽症の場合には手術を行わず、自然に出血が吸収される場合もあります。一方で慢性硬膜下血種に移行する場合もありますので経過を診ることが重要です。
慢性硬膜下血種は頭部外傷後、通常1~2カ月かけて、頭蓋骨の下にある硬膜(脳と脊髄を覆う膜の一つ)とくも膜の間にじわじわと血液がたまって血腫ができる病気です。血腫が大きくなり脳を圧迫することで、頭痛、物忘れ、意欲の低下や性格の変化、反応が鈍くなるなどの認知症によく似た症状、歩きにくい、片方の手足に力が入らないなどさまざまな症状をきたします。高齢の患者様に多くみられ、人口10万人あたり年間1~2人程度が発症するとされています。
脳の片側に血腫が形成されることがほとんどですが、約10%の頻度で両側に形成されることがあります。軽い頭部外傷(打撲など)が原因とされていますが、外傷歴がはっきりとしない場合もあります。お酒を飲んだ状態で転んだり、壁やドアに軽く頭をぶつけたなど本人が覚えていない場合もあります。
血腫が小さい場合は自然に治癒することもありますが、通常は手術(穿頭ドレナージ術)が必要となります。血液をさらさらにする薬(抗凝固薬、抗血小板薬)を飲んでいる患者様は術後の再発のリスクもあり注意が必要とされています。
いずれのご病気に関しても検査は頭部CT検査が重要となります。脳梗塞の診断にはMRI検査が用いられますが、出血や頭蓋骨の骨折の診断においてはCTの方が有用です。
頭部外傷においては頭皮の挫傷や裂傷を伴っている場合もあり、創部の縫合処置が必要になる場合もあります。
当院では診断の頭部CTにも縫合処置にも対応可能です。土曜日・日曜日・祝日にも対応が可能です。また、創部や頭蓋内の経過についても一貫して当院で確認することが可能です。気軽にご相談ださい。