高血圧の食事 ~減塩・DASH食の実例と1週間プラン~
- 2025年7月18日
- 生活習慣病
高血圧について
高血圧はその名の通り血圧が高い病態であり、上の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、または下の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上で診断されます。
血圧が高い状態が続くと、脳卒中・心筋梗塞・心疾患・慢性腎臓病・認知症など大きな病気へ繋がるリスクが高くなる為、早期発見・早期治療が重要です。
詳しくは高血圧の解説ページをご参照ください。
高血圧と食事の関係
高血圧で注意したい生活習慣には、食事、運動、肥満、喫煙、睡眠不足やストレスなどが挙げられますが、今回は食事についてお話したいと思います。
塩分制限
減塩という言葉は聞き馴染みのある方が多いのではないでしょうか。
高血圧での食塩摂取量は6g/日を目標とします。
しかし、日本人の平均食塩摂取量は約10g/日と言われている為、減塩(塩分制限)が必要です。
ではなぜ、塩分制限が必要なのでしょうか?
一般的に「塩分」と呼ばれるものは、塩化ナトリウムを指します。ナトリウムの摂取量が増えると、その濃度を薄めようと血管内に過剰な水分が入ることから、体内の血液量が増加します。
それにより、血管を押す力が強くなり血圧が上昇する為、制限する必要があります。
DASH食
減塩はよく聞くけど、DASH食は初めて聞いたという方も多いのではないでしょうか。
DASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)とは、米国で提唱された高血圧予防の為の食事法です。
具体的には、飽和脂肪酸やコレステロールを減らし、ミネラル(カリウム・カルシウム・マグネシウム)や食物繊維を増やすことで血圧降下を図ります。
【過剰摂取を控えたい食品】
・コレステロール
コレステロールの過剰摂取は、動脈硬化のリスクを高めます。
動脈硬化が進行すると、血管が狭くなり血液循環が悪くなる為、血圧が上昇します。
そのため、コレステロールを減らすことが血圧降下に繋がります。
コレステロールは、脂身の多い肉、魚の内臓、卵などに多く含まれています。
・飽和脂肪酸
飽和脂肪酸には、コレステロールを増やす働きがあります。
そのため、飽和脂肪酸を減らし、コレステロールを減らす働きをもつ不飽和脂肪酸を増やすことが血圧降下に繋がります。
飽和脂肪酸は魚以外の動物性脂肪に、不飽和脂肪酸は植物性油や魚類の油に多く含まれています。
【積極的に摂取したい食品】
・カリウム
カリウムには、ナトリウムを尿中に排出する働きがあります。
ナトリウムが排出されると血液中の水分が減る為、カリウムを十分に摂取することが血圧降下に繋がります。
カリウムは、野菜や果物、いも類、きのこ類、海藻類などに多く含まれています。
・カルシウム
塩分摂取量が多いと、尿中に排出されるカルシウムが増加します。
カルシウムが不足すると、骨や歯などからカルシウムを溶かして血中濃度を高めようとし、その際に血管壁が収縮する為、血圧が上昇してしまいます。
そのため、カルシウムを十分に摂取することが血圧降下に繋がります。
カルシウムは、乳製品、大豆製品、小松菜などに多く含まれています。
・マグネシウム
マグネシウムには、ナトリウムの尿中への排出を促し、カリウムを細胞内に取り入れる働きがあります。
また、カルシウムの働きを調整し血管壁の収縮を抑える働きや、血管を広げる働きもある為、マグネシウムを十分に摂取することが血圧降下に繋がります。
マグネシウムは、種実類(アーモンドなど)、穀類(玄米など)、大豆製品などに多く含まれています。
・食物繊維
食物繊維には、ナトリウムの吸収を抑える働きがあります。
また、糖質や脂質を排出する働きもあるため、食物繊維を十分に摂取することが血圧降下に繋がります。
食物繊維は、野菜や果物、穀類、大豆製品、きのこ類、海藻類などに多く含まれています。
●1週間献立例と栄養価
曜日 |
朝食 |
昼食 |
夕食 |
kcal |
たんぱく質 |
脂質 |
炭水化物 |
食塩 |
月 |
ご飯、焼き鮭、ほうれん草のおひたし、みそ汁、みかん |
玄米ご飯、鶏むね肉のグリル、キャベツサラダ、豆腐の味噌汁、キウイ |
麦ご飯、サバの味噌煮、小松菜のごま和え、具沢山味噌汁、ヨーグルト |
1805 |
83 |
48 |
240 |
5.8 |
火 |
オートミールバナナ粥、ゆで卵、トマト、低脂肪牛乳 |
雑穀ご飯、白身魚のホイル焼き、ブロッコリーの和え物、わかめスープ、りんご |
玄米、豚ヒレのソテー、きんぴらごぼう、キャベツ味噌汁、みかん |
1792 |
78 |
51 |
235 |
5.9 |
水 |
食パン、ゆで卵、ミネストローネ、バナナ、低脂肪牛乳 |
麦ご飯、サケの塩焼き、大根サラダ、なす味噌汁、オレンジ |
雑穀ご飯、鶏の照り焼き、ひじき煮、豆腐のすまし汁、ヨーグルト |
1803 |
81 |
49 |
239 |
6.0 |
木 |
玄米フレーク、バナナ、低脂肪ヨーグルト、豆乳 |
麦ご飯、白身魚の煮つけ、野菜炒め、みそ汁、キウイ |
玄米、鶏団子スープ、かぼちゃの煮物、キャベツサラダ、みかん |
1798 |
82 |
50 |
236 |
5.7 |
金 |
雑穀ご飯、納豆、味噌汁、小松菜おひたし、りんご |
玄米、豚しゃぶサラダ、わかめスープ、さつまいも煮、ヨーグルト |
麦ご飯、サバの塩焼き、なすの揚げ浸し、豆腐のすまし汁、バナナ |
1801 |
80 |
52 |
233 |
5.9 |
土 |
オートミール、ゆで卵、ミニトマト、バナナ、低脂肪牛乳 |
玄米、鶏ささみの梅しそ焼き、ブロッコリー、味噌汁、オレンジ |
雑穀ご飯、白身魚のソテー、ひじきの炒め煮、キャベツ味噌汁、キウイ |
1795 |
79 |
48 |
240 |
5.8 |
日 |
食パン、スクランブルエッグ、野菜スープ、バナナ、低脂肪牛乳 |
麦ご飯、サケのムニエル、温野菜サラダ、豆腐味噌汁、りんご |
玄米、鶏むね照焼、かぼちゃ煮、ほうれん草おひたし、みそ汁、ヨーグルト |
1800 |
82 |
50 |
238 |
5.9 |
栄養バランス評価コメント
・エネルギー:1800kcalを想定。エネルギー収支の観点からもDASH基準を満たす設計。
・たんぱく質:75〜85g/日と高めに設定されており、高血圧患者に多いサルコペニア予防にも有効。
・脂質:全体的に30%エネルギー比を下回っており、動物性脂質より植物性や魚由来脂質の比率が高い。
・炭水化物:全体としてエネルギーの50〜55%程度を占め、主に全粒穀物や野菜、果物由来の良質な炭水化物で構成。
・食塩:6g未満/日で設定。減塩の工夫として「だしの活用」「香味野菜」「酢」などを利用。