心肺運動負荷試験(CPX検査)とは?目的・流れ・メリットを医師が解説
- 2025年8月16日
- 心臓リハビリ
はじめに
「少し動くだけで息切れする」「運動をどれくらいしてよいかわからない」――そんな悩みに役立つ検査が 心肺運動負荷試験(CPX検査) です。
この検査では、運動中の心臓・肺・筋肉の働きを同時に調べることができ、息切れの症状の原因や安全な運動の強さを数値で“見える化”できます。
本記事では、CPX検査の目的・流れ・メリットを医師がわかりやすく解説します。
心肺運動負荷試験(CPX)とは?
運動中に、マスクをつけて自転車こぎなどの運動をしながら、呼気中のガスや心電図、血圧、酸素飽和度などを測定します。
軽い運動から徐々に負荷を上げていき、その間に呼吸の量や心拍数、酸素の取り込み、自覚症状などをリアルタイムで測定します。
労作時、運動中の「呼吸(肺)」「循環(心臓・血管)」「筋肉」の働きを、総合的に評価する検査です。
この検査によって、「今のあなたの体が、どのくらい効率よく酸素を使って動けるか」が明らかになります。病態評価や重症度判定、併存疾患の評価、労作時息切れの精査、また運動処方(運動プログラム)作成を目的に行われます。
CPXの適応
⓵労作時息切れ、動悸、疲れやすい症状、運動制限の鑑別診断(呼吸器疾患、循環器疾患、代謝異常、血液疾患など)
⓶狭心症、急性・陳旧性心筋梗塞、虚血性心疾患、心臓弁膜症、心筋症、先天性心疾患、不整脈、肺性心、心不全などの重症度判定、手術(心移植を含む)適応決定
⓷生活習慣病に対する運動療法、心大血管リハビリテーションのための運動処方作成
⓸循環器疾患患者の運動許可条件決定
(ATS/ACCP Statement on Cardiopulmonary Exercise Testing より一部改変)
CPXでわかること
CPXではさまざまなデータが得られますが、特に重要なのは次の3つです。
最大酸素摂取量(VO2peak)
体力や心肺持久力を示す指標。高いほど健康的です。
嫌気性代謝閾値(AT)
無理なく続けられる運動強度を示し、運動処方に役立ちます。
換気効率(VE/VCO₂スロープ)
心不全や呼吸器疾患で重要となる呼吸と循環の効率を評価します。
これらに加え、運動中の心電図や血圧の変化からも、心臓の働きを詳しく調べることができます。
高齢者や慢性疾患を持つ人にとって、CPXはリハビリや生活改善の指標として非常に有効です。たとえば、「なぜこの人は軽い家事でも息切れするのか?」「どこまでの運動が安全か?」という疑問にも、CPXのデータが答えてくれます。
例えば、「心臓のポンプ力が十分か?」「肺が効率よく酸素を取り込めているか?」「どれくらいの運動まで安全にできるか?」など、日常生活ではわかりにくい情報を数値で“見える化”してくれます。
CPX検査はどんな人におすすめ?
✔ 息切れや疲れやすさの原因がわからない方
✔ 心不全や呼吸器疾患(COPD・間質性肺炎など)の方
✔ 自分に合った運動量を知りたい方
✔ 高齢でも安全に運動を始めたい方
✔ リハビリの効果を確認したい方
✔ 手術前の体力評価が必要な方
✔ アスリートやスポーツ愛好家でパフォーマンスを向上させたい方
CPXのメリット
“原因不明の息切れ”を、心臓・肺・筋肉レベルで分析できる
あなたに合った安全な運動のレベル(運動処方)がわかる
リハビリや生活習慣改善の効果を定量的に評価できる
心肺疾患の早期発見や重症度評価に役立つ
検査の流れ(自転車エルゴメーターの場合)
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問診・体調確認
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心電図とマスクの装着
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自転車運動を10〜15分、徐々に負荷を上げて実施
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検査終了後はクールダウンと休憩
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医師による結果説明
検査自体は比較的短時間で終わり、準備や説明を含めてもおおよそ60分程度です。
よくある質問(FAQ)
Q. 検査は安全ですか?
→ 医師とスタッフが常に監視しているため、安全に受けられます。高齢者や心疾患の方でも実施可能です。
Q. 保険は適応されますか?
→ 症状や疾患によっては保険が適応されます。詳しくは医師にご相談ください。
Q. 運動が苦手でも大丈夫ですか?
→ 検査は軽い運動から始め、無理のない範囲で行いますのでご安心ください。
まとめ
心肺運動負荷試験(CPX)は、体がどれだけ効率的に酸素を利用できているかを客観的に調べられる検査です。
息切れや心不全・呼吸器疾患の精査だけでなく、リハビリや運動処方、アスリートの体力評価にも役立ちます。
👉 「最近息切れが気になる」「安全に運動を始めたい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。