日本心不全学会参加報告
- 2025年10月30日
- ブログ
10月10日・12日は発表の為、第29回日本心不全学会に参加してきました。
演題は2つで「SGLT2阻害薬が心臓リハビリテーション中のサルコペニア症例に与える影響」と「外来クリニックにおけるHFrEF診療の現状」という題目でそれぞれ院長と心不全療養指導士の藤原看護師が発表をしました。
それぞれ内容について簡単に解説をさせて頂きます。

SGLT2阻害薬が心臓リハビリテーション中のサルコペニア症例に与える影響

SGLT2阻害薬というお薬は心臓の保護作用を有する心不全の診療において極めて重要なお薬です。元々は糖尿病の診療に使っていたお薬ですが心不全診療にも有効なことが明らかになり、広く用いられています。ただ、尿から糖を排出する作用があり、栄養状態の不良な患者様では逆に栄養状態や体力を悪化させるのではないかということが懸念されっています。「サルコペニア」という状態は加齢により筋肉量が減少し、筋力が低下した状態で心不全が進行した患者様の多くがたどる経過です。サルコペニア状態の患者様は栄養状態も不良な場合が多く、SGLT2阻害薬の使用がはばかられます。しかし、心不全も不良な場合も多いので心不全の安定のためにはSGLT2阻害薬を使用したいというジレンマがあります。今回はサルコペニアに抗う要素として心臓リハビリに通院されている患者様でSGLT2阻害薬を使用して筋肉量の減少や筋力の低下が起こっていないかを確認しております。
20例程度の症例数で統計学的評価は不十分ですが、当院のデータで見ると心不全指標に関してはやはりSGLT2阻害薬を使用している症例で有利でしたが、筋力や筋肉量の変化はSGLT2阻害薬の使用にかかわらず同程度でした。
これを踏まえて当院としては運動療法に通院されている場合には、積極的にSGLT2阻害薬の導入を行っていく方向で考えています。
同時にリハビリに通院されている患者様を評価すると体力や筋力は向上していますが、筋肉量の総量は横ばいである傾向でした。筋肉量を増やすということは文献で見ても難しいとされています。この課題の解決のためには「栄養」との両輪が必須であることも再確認しました。管理栄養士と強く連携を行って、筋肉量を増やしてサルコペニアを脱却するリハビリを目指していきたいと思っています。
サルコペニアの解決は当院が掲げている目標の一つです。データと向き合いながら当院ならではの解決方法を模索していきたいと思っています。
外来クリニックにおけるHFrEF診療の現状

HFrEFとは心臓の収縮機能が低下した心不全のことを言います。この病態には適切に心不全薬を導入する事が重要であり、これをGDMT(Guideline‑Directed Medical Therapy)と呼んだりしています。今回の発表では当院でしっかりとGDMTができているかを確認しております。結果としては外来を通して必要なお薬の提案ができている傾向はありましたが、本来はもう少し強くご提案すべきところを、患者様のお薬への不安もあり、十分にはGDMTが達成されていない患者様もいらっしゃいました。
心不全の診療においては複数の心不全薬を導入することが、推奨されており、どうしてもお薬の数が多くなります。患者様によっては薬の数が増えることを懸念される場合もあります。当然患者様の想いも大事ですが、患者様がきちんと判断できるようにしっかりと情報を提供していくことは当院の責務だと思っています。
今回の学会でも心不全診療について深く考える機会になり、皆の成長につながったと思っています。
引き続き、患者様と向き合うことは当然のこととして、データと向き合う機会も大事にしながら成長につなげていきたいと思っています。

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