狭心症で胸が痛くなる仕組み:血流不足から痛みの信号が脳に届くまで
- 2026年2月28日
- 症状・病気
狭心症の定義と分類
狭心症は、典型的には①胸骨裏の不快感、②運動/精神的ストレスで誘発、③安静(またはニトログリセリン)で数分以内に軽快、の3つの条件で説明されます。
分類は主に労作性と冠攣縮性とに分けられ、それぞれ原因(需要・供給のどちらが主か)が異なります。冠攣縮や冠微小血管攣縮は一過性に冠血流が低下することにより心臓の筋肉の虚血を起こし得ます。
| タイプ | 主因(血流の問題) | 典型像 |
| 安定/労作性 | 器質的狭窄+酸素需要↑ | 一定の労作で出現し、休むと軽快 |
| 冠攣縮性 | 攣縮で供給↓ | 夜間〜早朝の安静時に出やすい |
| 冠微小循環障害 | 微小血管の拡張不全/攣縮 | 血管に器質的狭窄がない |
胸痛が生じるメカニズム
心臓の筋肉が虚血になると心臓の筋肉は嫌気性代謝に傾き、乳酸産生と酸化(H+増加)が進みます。こうした「酸(プロトン)」は心臓の交感神経求心線維を活性化し、それが痛みとして知覚されていると考えられています。
またATP分解に伴うアデノシン増加など複数の化学物質が、神経終末の受容体(侵害受容器)を介して痛みを増強すると考えられています。
心臓にて発火した痛みの信号が脳に伝わると、体表の感覚入力と合流し、痛みの場所が“ずれて”胸以外に放散して感じられることがあります(放散痛)。
同じ虚血で心筋の電気活動も変化します。ATPの枯渇でNa-Kポンプが障害され、膜電位差が乱れると「障害電流」が生じ、心電図のST変化として表れます(狭心症はST低下が典型)。これは痛みそのものではなく、虚血の“電気的サイン”です。
臨床的に注意する所見
狭心症では症状は胸痛だけでなく、息切れ、上腹部の不快感、顎・肩・背部の違和感などとして現れることがあります。主な誘因は運動、寒冷、食後、精神的ストレスなどです。また、
「安静時にも起こる」「頻度・強さ・持続が増える」「冷や汗・強い息切れや吐き気を伴う」「数分で治まらない」は不安定狭心症/心筋梗塞などを疑い、急いで受診する目安となります。
検査は心電図や血液検査で高感度トロポニンが推奨されています。緊急性の評価後に、一旦問題がない場合には運動負荷心電図や冠動脈CTで確定的な検査をリスクに応じて検討します。
糖尿病などでは神経障害で虚血になっても痛みが出ないことがあり、症状の有無だけに頼らない管理が重要です。
まとめ
狭心症の胸痛は、単なる血流不足そのものではなく、
✔ 虚血によって放出されるアデノシンなどの物質が
✔ 心臓の神経終末を刺激し
✔ その信号が脳で「痛み」として認識される
ことで起こります。
胸痛は、心臓からの重要な警告サインです。
患者さんへのメッセージ
胸の違和感や圧迫感を「疲れかな」「年のせいかな」と我慢していませんか?
運動時や階段昇降時に繰り返す胸の症状は、心臓からのサインかもしれません。とくに糖尿病や高血圧、脂質異常症のある方は注意が必要です。
早期に診断し適切に治療することで、心筋梗塞を防ぐことができます。
気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
早めの一歩が、将来の安心につながります。

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