腹痛の診療
- 2023年10月16日
- 症状・病気
循環器の診療科だとおなかの痛みは対処できないのでは?と思われるかもしれませんが、心臓のご病気をお持ちの患者様は他の臓器の合併症もきたしやすく、おなかの痛みはよく遭遇していた症状です。心臓のご病気をお持ちの患者様の腹痛の診断を誤ると持病の悪化につながり命にかかわりかねません。そういった状況で、ほかの専門領域についても研鑽を積み精度の高い診断・治療に努めてまいりました。
腹痛は、消化器、泌尿器、婦人科領域、血管、筋肉などおなかのあらゆる臓器の不調の症状として起こりえる症状です。病気のなかで最も多い症状の一つだと思われます。
痛みの程度や部位、性質、腹痛以外に伴っている症状などで原因となる病気を推測することが重要となります。
痛みの部位とご病気
みぞおち(心窩部)の痛み
みぞおちの部分にある臓器として胃、食道、十二指腸のご病気が代表的です。ただ、心臓のご病気、膵臓や胆嚢・肝臓のご病気でもこの部位に痛みをきたす可能性があります。
心臓のご病気としては心筋梗塞など重大なご病気の可能性もあります。おなかだから胃や消化器と決めつけずに、診察や検査を行って丁寧に心臓のご病気の可能性を排除することが重要です。必要に応じて心電図の検査や心臓の超音波検査を行う必要があります。
胃、食道、十二指腸のご病気として代表的なのが胃炎や胃潰瘍です。お薬での治療を行います。お薬で症状の改善が見られない場合には、胃がんなどの可能性も考慮し、胃カメラ(内視鏡検査)などで詳しく調べる必要性が高まります。
膵臓や胆嚢・肝臓のご病気として代表的なのは胆嚢炎や膵炎です。血液検査・超音波検査(エコー検査)・CT検査での診断を行う必要があります。急性膵炎、胆嚢結石・胆嚢炎、総胆管結石の嵌頓など緊急性を要する疾患もあります。原因の特定が大事ですので、速やかに検査等で重篤なご病気の可能性を排除することが大事です。
右上のおなかの痛み(右上腹部痛)
この部位に痛みがある場合には肝臓や胆嚢のご病気を疑います。肝炎、肝硬変、胆石症、胆嚢炎などがその代表です。血液検査・超音波検査・CT検査での診断を行います。
左上のおなかの痛み(左上腹部痛)
この部位の痛みは急性膵炎などの膵臓のご病気や脾臓、腎臓のご病気を疑います。血液検査・超音波検査・CT検査が重要です。
へその部分の痛み
へその部分に痛みがある場合には腸の病気がほとんどです。しかし、まれに大動脈瘤という血管のご病気が関与している可能性があります。大動脈瘤のご病気は問診や触診ではわかりにくい場合も少なくありません(大動脈瘤によって痛みが出ている場合には基本的には触ってはいけません)。60歳を超えるとご病気をお持ちの患者様が増加しますので、そういった場合には超音波検査やCT検査で可能性を除外することが極めて重要です。
腸のご病気の代表は腸炎や盲腸(虫垂炎)、腸閉塞です。腸炎は経過観察で改善が見込まれるご病気ですが、虫垂炎や腸閉塞は場合によっては手術が必要であり見逃せないご病気です。診断には血液検査やレントゲン検査、CT検査が極めて重要となります。
脇腹の痛み
脇腹の痛みは腸炎などの腸のご病気のほか、腎臓や尿管のご病気の可能性を考えます。腎結石や尿管結石については超音波検査やCT検査を行って診断を行う必要があります。
左右下腹の痛み
右下の痛みの場合には盲腸(虫垂炎)の可能性を除外することが重要です。これには血液検査やCT検査が極めて重要です。
ほかにも左右ともに痛みを起こしうるご病気として腸炎や憩室炎や虚血性腸炎といったご病気の可能性もあります。症状が強い場合には憩室炎や虚血性腸炎などの比較的重篤なご病気の可能性もあり詳しく調べる必要があります。
下腹の痛み
下腹の痛みの場合には膀胱炎が代表的です。腸炎や便秘などの場合もあります。
ほかにも男性の場合には前立腺炎など、女性では子宮付属器炎などのご病気の可能性も考慮します。尿検査や血液検査、超音波検査などが有用です。
おなか全体の痛み
全体に痛みがある場合には腸の病気がほとんどです。しかし、前述のとおり、まれに大動脈瘤という血管のご病気が関与している可能性があります。大動脈瘤のご病気は問診や触診ではわかりにくい場合も少なくありません(大動脈瘤によって痛みが出ている場合には基本的には触ってはいけません)。60歳を超えるとご病気をお持ちの患者様が増加しますので、そういった場合には超音波検査やCT検査で可能性を除外することが極めて重要です。
腸のご病気の代表は腸炎や虫垂炎や腸閉塞、腹膜炎です。腸炎は経過観察で改善が見込まれるご病気ですが、虫垂炎や腸閉塞、腹膜炎は場合によっては手術が必要であり見逃せないご病気です。診断には血液検査やレントゲン検査、CT検査が極めて重要となります。
腹痛の検査
身体診察
身体診察は当然ですが極めて重要です。痛みの部位から原因の特定につながることはもちろんですが、重篤な腹痛の場合には、お腹が硬くなりますのでお腹の硬さの評価のためにも重要です。
血液検査
重篤な疾患かどうかは血液検査で炎症の数値(白血球、CRPなど)を評価することによって
可能です。また、腎臓の数値や肝臓の数値を評価することによって症状を引き起こしている臓器のあたりをつけることも可能です。当院では院内に血液検査の機器を配備していますのでこういった検査の数値を当日受診時に知ることが出来ます。
胃内視鏡検査、大腸内視鏡検査
胃の中や大腸の中の病変を早期発見する場合には内視鏡検査が重要です。当院では内視鏡検査には対応しておりませんので、必要時には連携医療機関に当院から依頼をして検査を行っております。
腹部超音波検査
腹部超音波検査は腹痛の原因をみる負担の少ない検査です。肝臓・胆嚢・膵臓・腎臓・腸管などの様子を観察することにより腹痛の原因となる臓器の観察を行います。当院では専門の検査技師による検査が可能です。
腹部レントゲン検査
腹痛をきたす重篤なご病気には腸閉塞や腸に穴が開くご病気(腸穿孔)などがあります。これらの多くはお腹のレントゲンに所見がでてきます。便が溜まっている状況を評価することもできます。重篤な病気をしっかりと否定することは腹痛の診療において極めて重要です。当院での検査が可能です。
腹部CT検査
腹痛の原因を最も詳細に評価できる検査の一つがCT検査です。腹痛の程度が強い場合にはCT検査で重篤なご病気の否定をしっかりと行うことが大事だと考えています。当院ではCT検査装置を配備していますので、大きな病院に行くことなく、腹痛の原因の特定が可能です。
腹痛の治療
腹痛は原因によって緊急手術が必要になるもの、お薬での治療が必要になるものから、経過観察となるものまでさまざまです。だからこそ原因の特定を行って治療方針を定めることが重要です。
内服や点滴等で治療できるものは当院で対応も可能ですが、入院や手術を要する場合には連携している医療機関をご紹介させて頂いております。
まとめ
ここまでお書きした通り今日の腹痛の診療においては痛みの性状や部位からある程度原因となっているご病気を予測し、適切な治療を選択する必要があります。
当院では超音波検査やCT検査のほか、院内に血液検査機器を配備しており、タイムリーな診断と治療が可能であり、腹痛の診療においても力を発揮すると思います。
当院は土曜日・日曜日でも診療を行っております。
腹痛を感じられた患者様は気軽にご相談ください。
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