心不全で食欲が低下する原因
低栄養とは個人が必要としている栄養素が不足して欠乏することによってお体の機能を十分に維持できなくなってしまう病態です。心不全で低栄養をきたし、体重減少をきたす病態を「心臓悪液質」と呼ばれており、心不全の末期状態の可能性もあり注意が必要です。
心不全患者様では食欲の低下が起こります。主には心不全の病態による食欲低下、治療や薬剤に伴う食欲低下、年齢の影響があると言われています。
心不全の病態に伴う食欲低下
心不全による臓器のうっ血
心不全になると体内の水分の排出機能が低下し、処理できなくなった水分が各臓器のむくみとして現れます。腸管にむくみがあらわれると、栄養の吸収効率が低下します。肝臓にむくみがあらわれると、吸収した栄養素を合成する機能が低下し、栄養をうまく利用できなくなります。
低心拍出状態による症状
心臓の重要な働きの一つは各臓器に血液にのせて栄養や血流を届けることです。ただ心不全になりその機能が低下すると、臓器に十分に酸素や栄養がいきわたらなくなり、活力の低下や脱力・食欲の低下が起こります。この病態は命にかかわる病態であり、早急に各臓器への血流を確保できるように強心薬(心臓の動きを助けるお薬)を使用する必要があります。
食欲を調節する因子の障害
食欲の調節は一つは脳でコントロールされています。また脂肪組織から分泌されるレプチンや胃から分泌されるグレリンにも食欲を調節する機能があります。様々な物質が関与していることは明らかになっていますが、まだその全容は解明されていません。
心不全治療に伴う食欲低下
心不全にしばしば合併する虚血性心疾患ではアスピリンというお薬を服用する必要があります。アスピリンは胃の粘膜障害や胃潰瘍を起こすリスクがあり、それに伴って食欲不振になる可能性があります。
また心不全でよく使用される利尿薬に関しても多くのものは水分を尿として排出するときにナトリウムを一緒に排出しますので、体内のナトリウムが減少し、低ナトリウム血症をきたす場合があります。低ナトリウム血症をきたすと倦怠感や食欲不振の原因となる場合があります。
心不全患者様ではしばしば塩分制限を行います。塩分を控えた味の薄い食事も食欲低下の一因になりえると考えます。
年齢の影響
心不全患者様の多くは高齢者です。年齢に伴って起きる変化も心不全患者様の食欲低下の一因であると言えます。
年齢とともに抑うつ傾向を認める場合があります。心不全患者様における抑うつは生活機能の低下に直結し、心不全の予後を悪化させます。抑うつでも食欲が低下しますが、心不全患者様の抑うつに関する対応策はまだ確立されていないのが現状です。心不全患者様の抑うつの改善において注目されている治療の一つです。当院では運動療法を積極的に行って心不全患者様の抑うつの改善に努めています。
虫歯や歯槽膿漏が原因となって食欲が低下する場合もありますし、歯がなくなって食形態の調節を要するようになることで食欲が低下する場合もあります。
加齢に伴って唾液の分泌も低下し、味覚も低下します。これらが食欲の低下の原因となる場合もあります。
最後に
以上のように心不全患者様では様々な原因で食欲の低下をきたします。原因ごとに対処法も異なりますので、食欲の低下を認める場合にはどういった原因で食欲が低下しているのか原因の探索を行うことが重要です。
食欲の低下は心不全の予後と密接に関連しています。食欲の低下により低栄養状態が進むと体力が低下し、寝たきりに近くなっていったり、感染に対する免疫機能が低下する場合もあります。
心不全患者様では低栄養状態を回避することが極めて重要です。薬物療法や栄養指導、運動療法が不可欠です。
当院では循環器専門医をはじめ循環器疾患に精通したスタッフが多く在籍しています。気になることがございましたら気軽にご相談ください。
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