麻しんの流行が懸念
麻しん(はしか)の感染者の増加が連日報じられておりお問い合わせも多くいただいております。
麻しん報道の発端
発端は2月24日のアブダビから関西国際空港への飛行機でした。この便を利用した方の感染が発覚後、各地で感染者が報告されています。
麻しん流行が懸念される理由
海外との往来の増加と、麻しんワクチン接種率の低下という大きく2つの問題から麻しんの感染が拡大することが懸念されているのです。
海外との往来の増加
日本は近年「麻しん排除状態」といって国内には原則麻しんのウイルスがない状態で、基本は感染者の報告は海外からのもちこみに限定されていました。
近年はコロナ感染の影響で海外への、もしくは海外からの往来も少なくなっており、麻疹の感染者数が少ない状態が続いていました。しかし、コロナウイルス感染がひと段落しつつあり、海外との往来が回復しており今後感染の持ち込みは増加してくることが予想されます。
ワクチン接種率の低下
流行が懸念される理由のもう一つは麻しんワクチンの接種率が低下していることです。麻しんの主なワクチンであるMRワクチンの接種率は10年間で最も低い水準であると報告されています。
麻しんとはどんな病気?
麻しんは重症化につながる危険性のある病気です。麻しん感染者のうち25%は入院が必要となり、0.1%は死亡するといわれております。
麻しんの合併症を以下にご紹介します。
肺炎
最も多い合併症の一つであり、麻しん感染者の6%程度に合併するといわれています。特に小児の麻しん患者の死因としては最多となっております。
脳炎
痙攣や難聴・知的障害の原因となり、麻しん感染者の0.1%程度に合併すると言われています。
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)
感染して数年後に脳炎を起こす合併症であり、まれではありますが命にかかわります。
中耳炎
麻しん感染者の10%弱に合併すると言われており、悪化すると難聴の原因となる場合もあります。
眼科的障害
角膜の破壊によって重症化すると失明する場合もあります。
出産関連の問題
妊婦が罹患すると流産や早期陣痛を起こしたり、低出生体重につながる場合があります。
麻しんの症状
感染後2週間で症状が出現します。発熱、鼻水、咳やのどの痛み、結膜炎や下痢などの症状
から始まり、その2-3日後に全身に皮疹が出現します。感染初期の段階でお口の中にコプリック班と呼ばれる白いざらざらしたできものができる場合もあります。
麻しんの感染力
麻しんは極めて感染力の強い感染症です。1人から15人前後に感染する可能性があり、免疫を持たない人の9割以上は麻しん患者様との接触により感染が成立するといわれています。感染経路も空気感染と言って広がりやすい感染様式であり、数時間空気中に滞在して感染する場合もあります。
麻しんの予防
ワクチンの予防接種が重要です。ワクチンの接種により95%以上で抗体の産生が期待できます。成人でも抗体が不十分な場合には接触的なワクチンの接種が推奨されています。生涯で2回麻疹ワクチンを接種していれば、基本的には麻疹に十分な免疫を持つことができます。この機会に自分の接種歴を確認してみましょう。
ワクチンの接種歴がわからない場合は?
血液検査で麻しんの抗体価を調べることができます。いくつか検査方法はありますが、当院で採用しているEIA法という方法の見方をご紹介します。
16以上→抗体は十分でワクチンも不要
2以上16未満→抗体は陽性だが、ワクチンをもう1回追加することが推奨
2未満→抗体陰性で1回のワクチン接種が必要(最低27日あける)
麻しんワクチンの副作用と注意点
発熱
10-20%程度に起こると言われています。
発疹
10-20%に軽い皮疹が出現するとされています。
関節痛
麻しん・風しんワクチンの風しんワクチンに伴うものとされています。
妊婦
妊婦はワクチンをうってはいけません。接種後3か月は妊娠を控える必要があります。
ワクチン接種の現況
2024/3/25時点ではワクチンが不足しており、厚生労働省からの通達で小児へのワクチン接種を最優先とするようになっております。成人へのワクチンの確保は困難となっているのが現状です。接種を希望される場合もまずは抗体検査を受けていただき、流通が回復次第、接種を進めていただくほかありません。